研究1-超低体温法における血管内皮細胞障害の発生機構と対策において、血管内皮由来の物質測定を行い、低体温の程度による影響について評価を行った。 低体温体外循環下に心臓・大血管手術を受ける予定手術患者を対象とし、34〜36°Cをmild hypothermia群、25〜30°Cをmoderate hypothermia群、15〜20°Cをdeep hypothermia群と三群に分けた。各々の各ポイントで採血を行い血管内皮由来の物質(NOx、エンドセリン等)測定を行った。また血管内皮機能検査のため、人工心肺中、大動脈遮断後に潅流圧が安定した時点(低体温時)でアセチルコリン負荷テストを行い、皮膚血流量及び潅流圧を連続的に測定し、比較検討した。 現在までの対象症例は27名で、各群において患者の特性、及び循環動態に差はなかった。麻酔導入後の血中NOx濃度をコントロールとすると、体外循環中において、低体温の程度に関係なく全例血中NOx濃度は有意に減少を示した。また、一酸化窒素の代謝産物であるNOxは、尿中NOx濃度においても減少を示した。体外循環離脱後においてもNOx濃度の増加は認められず、減少を示したままであった。現在までの症例では翌日においても変化は認められていない。また、アセチルコリン負荷テストにおいては、低体温の程度が強いほど反応性が少ない傾向になっている。 現在までの結果においては、低体温体外循環は血管内皮細胞障害を発生させ、内皮機能を有する基礎的NO放出が抑制されていることが考えられる。また、その障害の程度は一過性の状態ではなく、手術翌日においても持続していることが明らかになった。 研究2-研究1の結果より、血管内皮細胞に保護効果のある薬剤を投与し、測定評価をする予定である。
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