研究概要 |
目的)膀胱癌組織におけるcathepsin D,E-cadherinおよびnm23蛋白の発現を免疫組織化学的に評価し、その予後に寄与する影響を検討した。(対象と方法)膀胱全摘除術を施行した87症例を対象とし、得られたパラフィン包埋切片を用いて、cathepsin Dと腫瘍の浸潤および転移に関連するE-cadherinおよびnm23蛋白の免疫染色を行った。核DNA量はFeulgen染色により5c exceeding rate(5cER)を求めた。一部の症例ではcathepsin DとPCNAの二重染色法による評価と、cathepsin DとFISH法による11番染色体数的異常との関連性も検討した。(結果)cathepsin D陰性腫瘍は55例(63.2%)にみられ、浸潤癌では約半数に認められた。E-cadherin染色性の低下およびnm23蛋白陽性例は各々53例(60.9%)および43例(49.4%)であった。た腫瘍先進部ではcathepsin D陽性細胞の減少に反しPCNA陽性細胞とnm23蛋白陽性細胞は増加していた。11番染色体のhyper diploid aberrationはcathepsin D陽性腫瘍に比較し陰性腫瘍で高頻度に認められた(P=0.03)。Cathepsin D染色性の増加はpT分類と5cERに負の相関を示し(p=0.0032およびp=0.030)、E-cadherin染色性の低下は組織学的異型度、pT分類および5cERと相関を示した(各々p=0.002,p=0.031およびp<0.0001)。一方、nm23蛋白染色性の増加は組織学的異型度とのみ正の相関を示した(p=0.012)。単変量解析ではcathepsin D染色性の低下およびE-cadherin染色性の低下は非再発率の低下(p=0.0052およびp=0.0356)、cathepsin D染色性の低下は生存率の低下に関連した(p=0.0035)。多変量解析ではpT分類と5cERが非再発率(p<0.0001およびp=0.048)、またpT分類とcathepsin D染色性が生存率に関し独立した規定因子であった(p=0.0001およびp=0.0469)。(結論)Cathepsin D染色性の低下は膀胱癌症例の補助的な予後規定因子になりうると考えられた。
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