研究概要 |
(目的)最近、他領域において電撃化学療法という新しい癌治療法が注目されている。これは腫瘍に高圧パルス波を通電し癌細胞に細孔を生じさせることにより投与された抗癌剤の取り込みを増加させ抗腫瘍効果を高めるものである。抗癌剤に対し極めて反応性の乏しい腎細胞癌について担癌マウスおよび試験管内において電撃化学療法による抗腫瘍効果さらに本法の作用機序等を検討し本法の有用性応用性を探る。(方法)ヌードマウス皮下に、CCF-RC-2(腎細胞癌株)を移植し実験に供した。使用薬剤は、BLM,5-FU,MMC,VBLを各々LD50の1/10を腹腔投与し投与30分後、電極を腫瘍の両側に刺入し、高圧パルス波を負荷した。以後腫瘍サイズを隔日で計測し、未処理(コントロール)および電圧負荷単独と比較した。また、担癌マウスより腫瘍を採取し組織学的検討、さらにアポトーシスの誘導をTunel法で検討した。また本法による薬剤の細胞への取り込みをIn vitro (CCF-RC-2)で検査し、殺細胞能をMTT asssayにて検査した。さらに、高圧パルス負荷による癌細胞膜の細孔を走査電顕で観察した。(結果)In vitroにおいてもBLM投与電圧負荷群において有意な殺細胞効果が観察された。また本法により有意に薬剤の腫瘍への取り込みが観察された。その結果、BLM投与電圧負荷群において十分な腫瘍サイズの抑制が観察された。他の抗癌剤は電圧負荷においても抗腫瘍効果は認められず、また電圧負荷単独でも効果は認められなかった。BLM投与電圧負荷群では病理組織学的には腫瘍細胞の壊死像が観察され、さらに本法による腫瘍細胞のDNAのフラグメント化が観察された。走査電顕にて電圧負荷によると思われる癌細胞膜の細孔を観察可能であった。(結語)腎細胞癌において、In vivo,In vitroともにBLM投与電圧負荷群で抗腫瘍効果が認められ、癌化学療法の増強法として本法の有用性が示唆された。
|