研究概要 |
哺乳類の精子は受精に先立って受精能獲得・先体反応といった一連の機能的・形態的変化を起こす。先体反応を誘起する物質としてはZP3・卵胞液・プロゲステロン等が知られているが、リン脂質性のケミカルメディエーターである血小板活性化因子(Platelet-activating factor:PAF)も先体反応を誘起し、プロゲステロンは精子のPAF産生を亢進する事が報告されている。PAFの合成経路には一般にremodeling系とde novo系があるが、我々はラット精子ではPAFは主にde novo系により合成されることを報告した(Mugurauma K,et al:Biol Reprod 56,529,1997)。そこで本研究ではラット精子で、PAFのde novo合成系のkey enzymeであるalkylglycer opheosphate:acetyl-CoA acetyl transfer ase活性が受精能獲得・先体反応の際に変化するかを検討した。 ラット精巣上体尾部より精子を調製し、受精能を獲得させるためにmodified Kr ebs Ringer Bicarbonate buffer中で5時間培養(37℃,5% CO2 in air)してalkylglycer ophosphate:acetyl-CoA acetyltransfer ase活性を測定したところ、本酵素活性は培養前0.45±0.28 nmol/min/mg protein、培養後0.35±0.10 nmol/min/mg protein(mean±S.E.,n=4)と有意差を認めなかった。一方精子を同条件で培養した後にプロゲステロン(5 μg/ml)で30分間刺激したところ、本酵素活性は刺激前の280%に上昇した。したがってPAFは先体反応の誘起に関与していると考えられ、今後は本酵素のプロゲステロンによる活性化機構について検討する予定である。
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