エリスロポエチン(以下EPO)産生腎細胞癌がIL-2^+IFNαの免疫療法に高いレスポンスを示したと言う報告より、EPOの発現が免疫担当細胞の標的分子となっている可能性、及び腎細胞癌におけるEPOの発現が免疫療法を行う上で重要な指標と成り得る可能性を示唆している。今回我々は、EPOの発現が免疫担当細胞(lymphokine activated killer cells以下LAK、tumor infiltrating lymphocytes以下TIL)の標的分子と成り得るか検討した。腎摘出術により採取した腎細胞癌25例について、そのmRNAレベルでのEPOの発現を調べると、25例中9例(36%)においてEPOの発現が認められ、さらにそのうち培養可能であった17例中5例(30%)において培養上清中にEPOの産生が認められた。上記症例において、EPOの発現、産生の有無におけるLAK細胞の感受性の違いを比較すると、EPOを発現、産生している腎細胞癌は、そうでないものに比べ、LAK細胞に高い感受性を示した。この事より、EPOの発現が標的分子として認識されている可能性が示唆された。さらに、EPOを発現、産生していない細胞にEPOの遺伝子を導入し、EPOを発現させることにより免疫担当細胞の感受性を高めることができればEPOが標的分子として認識されている可能性をより証明できると考え、EPOの発現、産生していないKRC1(腎細胞癌細胞株)、KUR11(腎細胞癌初代培養)、COS7、にEPOの遺伝子を導入し、stableにEPOを産生する系を樹立したつそしてEP○を発現させることによりLAK細胞や、TILの感受性を増加させることができた。これらの実験より、腎細胞癌上のEPOの発現が、免疫担当細胞の標的分子と成り得る可能性が示唆された。以上の研究結果は、第83回日本泌尿器科学会総会、第54回日本癌学会総会、第47回西日本泌尿器科学会総会シシポジウム、第85回日本泌尿器科学会総会において発表した。その後、EPOの坑体を使ったブロッキング実験を実施したが、うまくブロックがかからず、現在、EPOがどのような形で腫瘍細胞上に露出しているのか調べている。
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