研究概要 |
我々は、ハムスター卵管特異糖蛋白質を発見し、生化学的手法・生殖生物学的手法により本物質が受精に関与する機構解明に努めてきた。近年,我々はハムスター及びマウス卵管特異糖蛋白質cDNAの単離に成功し、In situ hybridization(ISH)でハムスター卵管特異糖蛋白質mRNAの発現はエストロゲンに支配されていることを明らかにした。しかしながら通常のISH法では形態保持が悪く同物質の動態を解析する上で問題が残されている。実際ハムスターにおいては免疫組織化学を用いた蛋白質発現とISHで明らかにした遺伝子発現に乖離が認められている。従って、本研究では電顕ISHにより詳細にハムスター卵管特異的糖蛋白質mRNAの細胞内局在又は組織内局在を明らかにすることにより本物質の発現動態を解析することを目的とした。本年度はまずその基礎実験として透過電子顕微鏡を用いハムスター卵管の性周期における形態変化を検討した。ハムスターは性周期が4日間と不完全性周期であり,発情期,発情休止期(Day1),発情休止期(Day2),発情前期からなる。準超薄切片及び超薄切切片で観察したところ発情期には非繊毛細胞の割合が上昇し分泌顆粒が増加した。一方,発情間期では繊毛細胞の割合が上昇し非繊毛細胞の分泌顆粒も減少していた。発情前期になると再び発情期に似た像を示した。電顕ISHは未だ一般的に確立したものとは言い難く未だ形態保持には難点がある。同物質の発現動態を解析するため、今回透過電顕でこのような基礎的情報を得られたことは大変有用であると思われる。今後、今回の結果と電顕ISHの結果を比較することによりさらに発現動態の解析を進めていく予定である。
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