本研究は、本態性高血圧との関連が報告されている遺伝子やその他の遺伝子を、妊娠中毒症の遺伝的リスクファクターの候補遺伝子として、これらの遺伝子の多型が妊娠中毒症と関連するかを明らかにし、ついでこれらの遺伝子多型の組合せと妊娠中毒症の発症の危険率との関係を分析することを目的とした。具体的に平成9年度は、Angiotensinogen(AGT)遺伝子、Angiotensin II type1受容体(AT1)遺伝子、ホモシステイン濃度と関連のあるMethylenetetrahydrofolate reductase(MTHFR)遺伝子の各遺伝子の遺伝子多型と妊娠中毒症の関連性を検討した。 対象は、重症妊娠中毒症と診断された妊婦81名、正常妊婦123名、非妊娠の一般日本人380名とした。遺伝子多型の解析は、polymerase chain reaction(PCR)/dot blot hybridization法、PCR/restriction fragment length polymorphism(RFLP)法、mismatch-PCR/RFLP法等を各々の遺伝子に応じて用いた。その結果、AGT遺伝子のM235T多型、T174M多型、-6(G→A)多型、およびAT1遺伝子のA1166C多型については妊娠中毒症との関連は否定的であった。これに対して、MTHFR遺伝子についてはそのC677T多型と妊娠中毒症の有意な関連が認められ、本遺伝子が妊娠中毒症の発症に関連する多型性責任遺伝子である可能性が初めて明らかとなった。来年度はさらに新しい未知の妊娠中毒症関連遺伝子の多型について検索、同定する予定である。 以上のように、本研究は概ね当初の計画どおりに進行することができた。
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