研究概要 |
本研究は妊娠14週から40週までのさまざまな週齢の臍帯における細胞周期調節因子等の発現を比較することにより、臍帯の発生過程における細胞増殖がどのように制御されているのかをあきらかにすることを目的として開始された。免疫染色の結果、発生初期の臍帯(14週〜19週)動脈平滑筋細胞においてcyclinE強陽性の細胞が多くみられ、発生後期の臍帯(39〜40週)動脈平滑筋細胞においてはcyclinE陽性細胞の数が低下していた。これとは逆にp21は発生後期の臍帯動脈平滑筋細胞において発現が強く、発生初期の臍帯動脈平滑筋細胞においては発現が弱かった。ウエスタンブロッティング法を施行したところ、2種類のcyclinEモノクローナル抗体のどちらも免疫染色と同じ傾向を示した。発生初期の臍帯(14週〜19週)において強発現し、それ以降発現が低下していく。ウエスタンブロッティング法においては転写調節因子E2F1,DNA複製関連因子PCNAも同様に発生初期の臍帯(14週〜19週)においてのみ発現した。cyclinEと複合体を形成するp33cdk2の発現は発生の全期間を通じて観察されたが、その発現量は週齢があがるにつれ減弱した。一方p33cdk4は発生の全期間を通じて観察され、その発現量に変動は見られなかった。 ウエスタンブロッティング法ではp21、p27の発現については一定の結果が得られなかった。またRT-PCR法でp21の発現を検討したところ発生の全期間で有為差は認められなかった。また発生初期の臍帯ではテロメレースが発現している可能性があるのではないかと考え、テロメレースアッセイを施行したが、14週以降ではどの週齢においてお発現は認められなかった。これまでの結果より、臍帯の発生ではその初期に、cyclinEが強く発現していることが確認された。
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