研究概要 |
妊婦膣分泌物および妊婦子宮頚管粘液を臨床検体として妊娠20週62例、妊娠30週64例、妊娠34週60例の合計186例の検討を行った。このうち、正期前陣痛、正期前前期破水などの羊水感染をきたした症例は合計12症例であり、残りの174症例は羊水感染をきたすことなく正常分娩に至った症例であった。 1.細菌学的検討 妊婦膣分泌物および妊婦膣子宮頚管粘液ともに、いずれの妊娠各時期においても羊水感染症例では、正常例に比較して、検出菌株数が有意に増加していた。また、妊娠子宮頚管粘液から検出された細菌は、必ず妊婦膣分泌物からも検出されており、上行性感染を支持する結果となっていた。 2.感染局所におけるS.agalactiaeの存在 妊婦の186症例の検体のうち、膣分泌物中の39症例(21.0%)に、子宮頚管粘液中の28症例(15.1%)にS.agalactiaeの存在が認められた。preterm labor/PROMなどの羊水感染をきたした12症例では子宮頚管粘液中の4症例(33%)にS.agalactiae抗原の存在が認められた。 3.感染局所におけるエンドトキシン値 preterm labor/PROMなどの羊水感染をきたした12症例中の6症例(50%)で子宮頚管粘液中のエンドトキシン値が高くなる傾向が認められたが、膣分泌中のエンドトキシン値には、明らかな傾向は認められなかった。なお、子宮頚管粘液中のエンドトキシン値のカットオフ値は、100pg/mlに設定することでpreterm labor/PROMなどの羊水感染の予測が可能になるものと考えられた。 4.感染局所におけるサイトカイン値 preterm labor/PROMなどの羊水感染をきたした12症例中の6症例で膣分泌中および子宮頚管粘液中の炎症性サイトカインIL-8値が高くなる傾向が認められたが、IL-6値では、明らかな傾向は認められなかった。なお、膣分泌中および子宮頚管粘液中の炎症性サイトカインIIL-8値のカットオフ値は、5,000pg/mlに設定することでpreterm labor/PROMなどの羊水感染の予測が可能になるものと考えられた。
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