研究概要 |
本研究計画は大きくA-培養卵巣表層上皮を用いた卵巣癌初期発生に及ぼすhCGの影響、B-卵巣癌細胞株を用いた、抗腫瘍剤誘導アポトーシスに及ぼすhCGの影響の基礎的(in vitro)検討、C-動物実験を用いた卵巣癌治療モデルにおけるhCGの影響の検討及びその臨床応用の試み(in vivo)、に大別し、これを2年間に分けて行うものである。平成9年度では、A-1.培養卵巣表層上皮におけるLH/hCG受容体の発現の検討、A-2.培養卵巣表層上皮における細胞死(アポトーシス)にhCG添加が及ぼす影響の検討、A-3.培養卵巣表層上皮へのhCG添加による、アポトーシス関連遺伝子、DNA修復遺伝子の状態への影響の検討、B-1.卵巣癌細胞株におけるLH/hCG受容体の発現・細胞死(アポトーシス)にhCG添加が及ぼす影響の検討、B-2.卵巣癌細胞株へのhCG添加による、アポトーシス関連遺伝子、DNA修復遺伝子の状態への影響の検討、C-1.卵巣癌患者における、血中LH濃度・LH/hCG受容体の発現様式の検討をおこなった。この結果、培養卵巣表層上皮におけるLH/hCGの受容体発現をRT-PCR法、リガンド結合実験を用いて確認し、さらに培養卵巣表層上皮にhCGを添加したところ、その増殖状態は変化しないものの、アポトーシスが著明に抑制されることをDNAフラグメントの半定量法、TUNEL法を用いて確認した。また、 培養卵巣表層上皮にhCGを添加し、これによってアポトーシス関連遺伝子(bcl-2,bax,IGF-1)の発現が変化するか否かをRT-PCR/ノザンプロット法を用いて検討し、bcl-2,baxの発現は変化しないがIGF-1発現は著明に亢進することを確認した。次に、卵巣癌細胞株OVCAR-3においても培養卵巣表層上皮と全く同様の現象が起こることを確認した。また、摘出標本を用いて卵巣癌組織におけるLH/hCG受容体の発現様式を検討し、個々の症例における化学療法への感受性や、予後と関連を検討した。
|