1.正常妊娠経過でのNO関連物質の変化 正常妊娠症例の検討では、血清nitrite+nitrate値(NO)の安定代謝産物でNO産生の指標)は、妊娠初期より徐々に上昇し、妊娠30週前後にピークとなり、妊娠36週頃には妊娠初期と同程度まで下降し、産褥期もこの値を維持した。また、NO産生の基質となる血漿L-アルギニン値は妊娠中に下降し、産後に再び上昇したことから、妊娠中のNO産生亢進が、L-アルギニンの消費増大を引き起こし、その値が低下すると考えられた。 2.妊娠中毒症やHELLP症候群でのNO関連物質 血清遊離ヘモグロビン値は、血管内溶血の起こるHELLP症候群や重症妊娠中毒症で上昇し、ハプトグロビンは低下していた。血清nitrite+nitrate値は肝機能障害や凝固障害の見られない妊娠中毒症では妊娠30週前後での上昇が見られない症例が目立ち、HELLP症候群や重症妊娠中毒症では反対に正常妊娠よりも高値をとっていた。また血漿L-アルギニン値もHELLP症候群や重症妊娠中毒症では高値をとる傾向が見られた。 3.胎盤内のNO産生酵素の局在とapoptosis 妊娠中に亢進するNOの産生源の一つとして胎盤のNO産生酵素の局在を検討した。正常胎盤において血管内皮型のNO産生酵素が存在し、絨毛羊膜炎や、妊娠中毒症等に伴う常位胎盤早期剥離の胎盤では誘導型のNO産生酵素が強く発現していた。また、これに伴いapoptosisも認められた。
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