トロンボキサンの誘導体であるU46619によって引き起こされるブタ冠動脈平滑筋の収縮を、レラキシンが増強することが明らかとなった。レラキシンの効果は、ホルモン状態によって変化する可能性が大きいと考えられる。したがって、週齢およびエストロゲンがレラキシンの効果に影響するかどうかを、ラット大動脈を用いて検討したが、レラキシンを投与しても、フェニレフリンによって引き起こされるラット大動脈の収縮は変化しなかった。 一方、レラキシンが関与する細胞内情報伝達系は、不明な点が多いため、血管平滑筋の収縮を制御する新規の細胞内情報伝達因子を同定する実験を平行して行った。その結果、細胞膜の生理的構成成分であるスフィンゴ脂質の一つであるスフィンゴシルホスホリルコン(SPC)が、ブタ冠動脈平滑筋の収縮を引き起こすことが明らかとなった。さらに、SPCは、ブタ冠動脈平滑筋の細胞質Ca^<2+>濃度を増加させるが、細胞質Ca^<2+>濃度増加から予想される以上に強い収縮Ca^<2+>非依存性の収縮)を引き起こすことが示された。細胞質Ca^<2+>濃度の測定は、蛍光指示薬fura-2を用いて行った。細胞内へfura-2を負荷し、340nmおよび380nmの励起光を当て、510nmにおいて蛍光を測定し、その蛍光比を細胞質Ca^<2+>濃度の指標とした。 今後は、レラキシンによる収縮とスフィンゴ脂質によるCa^<2+>非依存性の収縮との関係を明らかにしていくと共に、レラキシンが血管内皮細胞に与える影響を調べていく必要がある。
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