1.免疫グロブリン結合蛋白の可溶化と精製。 予備実験として個々の頸管粘液を還元状態でSDS-PAGEで分離し、PVDF膜に転写した後で、ビオチン化ヒトIgGを反応させると15kDと25kDに陽性のバンドを認めた。しかし15kDのバンドは免疫グロブリンのクラス・IgGサブクラスあるいはヤギ、ウマ、ブタIgGにかかわらず反応したため、これを指標として精製・純化を試みた。 精製・純化のために約300mlの頸管粘液を準備した。-40℃で凍結保存した約100mlの頸管粘液を0.66M NaClで塩溶し、その上清を90%硫安で塩析後、透析を行い試料とした。しかし免疫グロブリン結合蛋白の可溶化は非常に困難であり、塩濃度・pHの変更、尿素、SDS、βメルカプトエタノールなどの添加やアセトニトリルにも溶解しなかった。このためクロマトグラフィー、HPLCによる精製を断念した。 2.免疫グロブリン結合蛋白のアミノ酸配列の決定。 そこで部分精製した試料を還元状態でSDS-PAGEで分離後、Western blotを行い、PVDF膜をPonceau Sで染色した。15kDに一致したバンドを切り出し、気相式アミノ酸シークエンサーでアミノ酸配列を分析したところ、N末端(1-21)のアミノ酸配列が(SGKSFKAGVXPPKKSAQXLRY)であることが明らかとなり、ホモロジー検索でSecretory leukocyte protease inhibitor(SLPI)であることが判明した。 さらにrecombinant SLPIがビオチン化ヒトIgGと反応することを確認した。
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