目的:慢性低酸素状態にあるといわれている子宮内発育遅延胎児では、血流再分配がおきていることが広く知られている。また、以前我々はこのような胎仔血流再分配に関与していると言われていたArginine Vaso pressin(AVP)が低酸素(non-acidemic-hypoxia)刺激24時間以内に正常化することを報告した。そこで今回、AVPが正常化する24時間低酸素刺激中の胎仔臓器別血流量の変化を測定した。 方法:在胎135日の日本ザ-ネン種妊娠ヤギ2頭を用いて慢性胎仔実験モデルを作製し、術後3日経過した後、母獣気管より窒素ガスを流入することにより、胎仔動脈血酸素分圧を21.4±0.5mmHgから約12mmHgに減少させ、24時間の持続低酸素状態(non-acidemic-hypoxia)状態下においた。胎仔各臓器の血流量はcolored microsphere法により測定し、microsphereはTRITON社製DYE-TRAKを用いた。 結果:Control 2時間 12時間 24時間 pH 7.32±0.02 7.27±0.04 7.38±0.03 7.34±0.03 pO2 21.4±0.5 13.3±2.0 12.3±2.1 10.6±0.8 pCO2 31.8±3.0 35.1±1.5 36.5±2.2 41.4±3.2 FHR 152±12 199±22 198±6 185±12 臓器別血流分布(mL/100g/min.) 大脳 133±16 166±20 133±16 440±28 心 286±82 249±86 300±112 732±162 腎 101±20 120±22 94±7 121±52 脾 158±25 87±18 195±22 185±60 副腎 398±52 418±56 368±43 399±72 骨格筋 7±0 9±1 8±1 7±4 結論:AVPの正常化する24時間の持続低酸素 (non-acidemic-hypoxia)状態下で大脳、心臓などのいわゆるVital Organの血流量は増加し、AVPの分泌と血流再分配との間に解離現象が認められる可能性が示唆された。現在実験数が2例であり、来年度は増やし、エンドテリンと胎児臓器別血流についても行う予定である。
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