妊娠中はエストロゲンやプロゲステロンなどの血中ステロイドホルモンが妊娠週数にしたがって上昇することが知られている。そこでステロイドホルモンの癌関連ガラクトース転移酵素(GAT)産生機序への関与の検討に向け、高ステロイドホルモン状態として妊娠状態を、血中GATのoriginとして胎盤を想定し、妊娠週数とGATとの関係を検討した。 妊婦血清中のGATは妊娠週数にしたがって上昇し、分娩後速やかに減少した。これは妊婦血清中のエストロゲンと同様の傾向であった。またGATを認識するモノクローナル抗体にて胎盤を染色したところ、初期から中期にかけては卵巣癌細胞の場合と同様に核周囲の網状構造を呈して強陽性を示した。これに対して晩期の胎盤ではほとんど陽性所見は認められなかった。 以上より、妊婦血中ではエストロゲンの影響によってGAT値が増減する可能性が示唆され、GATのoriginとして妊娠初期〜中期には胎盤の存在が示唆され、さらに晩期には胎盤から他部位にGATの産生・供給部位がswitchする可能性が示唆された。
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