研究概要 |
近年抗リン脂質抗体と反復血栓症、反復流産、血小板減少症との関係が注目を浴びている。中でも抗リン脂質抗体と、血栓症または血栓症と関係の深い妊娠中期以降のfetal lossとの関係は解明されつつあるが、初期流産との関係については疑問の声も多い。また、一口に抗リン脂質抗体といっても、その種類は多様であり、現在cardiolipin(CL)やphospatidylserine(PS)などの陰性荷電リン脂質に対する抗体の目標抗原としてβ_2-glycoprotein I(β_2GPI)やprothrombinなどが挙げられている。我々は、中性のリン脂質のphosphatidyl-ethanolamine(PE)に対する抗体の目標抗原としてkininogenを発見した。今回我々は、反復初期流産患者に限定して電気的陰性および中性リン脂質両者に対する抗リン脂質抗体のスクリーニングを施行した。 ELISA法により、抗CL(aCL)IgG(β_2GPI依存性と非依存性)、抗PS(aPS)IgG,IgM,IgA、抗PE(aPE)IgG,IgM,IgA(それぞれcofactor依存性と非依存性)を測定した。また、lupus anticoagulant(LAC)はdRVVTとaPTT mixing testで測定した。 上記12種類の抗リン脂質抗体を測定したところ、aCL、aPS、LACの陽性率は比較的低く(aPS IgG:2.8%、aPS IgM:0.9%、aCL IgG:5.7%、LAC:1.9%)対照群と有意差が無いのに対し、aPEでは有意に(p=0.0008)高頻度に検出された(aPE IgG:18.9%、aPE IgM:13.2%)。また、cofactor依存性aPE IgG陽性患者30人の目標抗原を検討したところ、73.3%が精製したkininogenを認識した。女性生殖器は体内で2番目にkininogenのrichな部位であり、kininogen-PE complexを認識するaPEが初期流産患者より多く検出されたことは非常に興味深い。今回の我々のデータより、aPEはaCLやLACと比較して、より妊娠初期流産と関係が深い事が示された。
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