研究概要 |
1991年から1997年までの久留米大学産婦人科を受診した原発性卵巣癌62症例および良性疾患40症例を対象とし、保存血清中のMAGE-4蛋白濃度をサンドイッチELISA法によって測定した。は1997年岩本らの報告による健常人の平均値+3SDを使用した。なお、統計学上の検定には、Student′t-tSetを使用した。 1,卵巣癌の血清MAGE-4蛋白濃度は、0.49ng/mlで、良性疾患の0.14ng/mlに比較して有意に上昇していた(p<0.01)。2,卵巣癌における血清MAGE-4蛋白の陽性率は21%(13762)であった。この結果は以前の研究報告による卵巣癌組織中のmRNAレベルでのMAGE-4遺伝子の発現より高頻度であり、ELISA法による血清中の測定はより高感度な測定法として示唆された。3,組織型別には、MAGE-4蛋白は上皮性卵巣腫瘍、特に漿液性腺癌(26%)に高頻度に発現していた。4,臨床進行期別には、I-II期で0.37ng/ml,III-IV期では0.55ng/mlで、有意差は認められないが、進行例においてより高頻度の発現を認めた。陽性率においても、I-II期で15%、III-IV期では25%であり同様の傾向が認められた。この結果より、MAGE-4蛋白が、卵巣癌の予後因子となる可能性を考慮し、上皮性卵巣癌53例について、KaplanMier法で累積生存率を算出し、Iogrank法にて検定した。すると、MAGE-4陽性症例が、MAGE-4陰性症例より有意に予後不良であった(P<0.05)。しかし、年齢、臨床進行期、リンパ節転移の有無、組織型など他の危険因子との多変量解析までは行えず、独立した予後因子としての評価には更なる検討が必要である。
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