研究概要 |
内耳においてどのようなイオンチャネルが存在し、また、どのように機能しているかを分子生物学的手法を用いて検討した。具体的には、新たにクローニングされた電位依存性Kチャンネル(Kv7.1)のラット内耳における発現をin situ hybridization法を用いて検討した。ラット側頭骨より摘出した蝸牛や、前庭神経節の凍結切片を作製し、digoxygeninを用いて標識(non-RI)したKv7.1cRNAプローブを組織上で反応させ、さらにアルカリホスファターゼ標識抗digoxygenin抗体にて可視化した。蝸牛ラセン神経節細胞と前庭神経節細胞におけるKv7,1mRNAの発現率は、各々約60%、30%であった。ラセン神経節細胞はI型細胞とII型細胞に分類されているがKv7.1mRNAの発現率はこれとは異なった比率であり、ラセン神経節細胞ではKv7.1の有無で機能的にも異なった役割を担っている可能性が示唆された。すなわち、末梢レベルで音刺激による反応をコントロールしている可能性も考えられた。Kv7.1が聴覚伝導や、前庭機能にどのように関与しているかは明らかではないが、重要な機能を担っている可能性が考えられた。 また、内耳における求心系神経伝達物質はグルタミン酸、遠心系神経伝達物質はアセチルコリン、GABAが有力であるが、そのトランスポーターに関してはほとんど明らかにされていないのが現状である。そこでこれらのトランスポーターについて内耳において発現しているか否かをRT-PCR法にて検討した。GABAトランスポーターとしてGAT1、GAT2、GAT3の存在が知られていが、今回の検討ではGAT-2が内耳に存在していることが明らかになった。
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