研究概要 |
1. 蝸牛組織からのRNAの抽出 微小な蝸牛組織からRNAを抽出するのは非常に困難であった。そのため実体顕微鏡下に蝸牛の骨壁を除去し、軟部組織を採取した。今回の検討では、80匹のラットの蝸牛組織から採取された全RNA量は130.7μgであった。 2. 水チャネルのAQP1,AQP2,AQP3,AQP4,AQP5のRNAレベルでの発現 RNA採取量が微量のため、RT-PCR法によりAQP1、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5のmRNAが蝸牛組織に存在するかどうか検索した。その結果、AQP1のPCR産物が得られたがその後の検討では再現性に乏しく、AQP2、AQP3、AQP4、AQP5のPCR産物も得られなかった。 3. 免疫組織化学的検討 ラット蝸牛凍結切片において家兎抗ラットAQPl、2、3、4抗体(ケミコンインターナショナル社)AQP5抗体(新潟大学医学部附属腎研究施設構造病理学分野より供与)を一次抗体に、二次抗体にはFITC標識羊抗家兎IgG(Organon Teknika, West Chester, PA, USA)を用い蛍光抗体法間接法によって観察した。蝸牛ではAQPlは蝸牛外側壁のラセン靭帯の外側部とラセン唇上部(supra limbal region)に強く染色された。また鼓室階、前庭階の表面に線状に染色された。また蝸牛軸では比較的径の細い管腔構造に選択的に染色された。また正円窓膜にも強く染色された。蝸牛組織でAQP2〜5は染色されなかった。陽性対照に用いた腎では、AQPlは近位尿細管の管控膜と側底膜に、AQP2は集合管の管腔膜に、AQP3は集合管の側底膜に、AQP4は集合管の側底膜に染色された。RT-PCRと免疫組織化学的検討の結果の不一致の原因は蝸牛組織が微量であるため良質なRNAが採取されないためではないかと思われた。
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