研究概要 |
頭頚部癌化学療法において、抗癌剤の効果をより高めるための新しい試みとして、アポトーシス誘導型化学療法の可能性について遺伝子操作を用いて検討することに注目した。頭頚部癌細胞株を用いて、アポトーシスに深く関係しているFas抗原、Bd-2、Baxの発現と抗癌剤に対する感受性との関連を調べた。 1.抗Fas抗体におよるアポトーシスの誘導:頭頚部癌細胞株であるKB、IMC-2を抗Fas mAb(IgM,1μg/ml)とともに培養すると、双方に形態学的にアポトーシスが誘導され、その割合は、KBの方が有意に多くみられた。 2.ウェスタンブロット法によるFasおよびBd-2、Bax蛋白の検出:FasおよびBaxの発現はKB、IMC-2に同程度にみられた。一方、Bd-2蛋白はIMC-2では強く、KBには弱い発現がみとめられた。 3.アンチセンスDNAによるBd-2蛋白の抑制によるCDDPに対する感受性の変化:MT法による検討により、抗Fas抗体に対する感受性と同様にKBのほうがIMC-2よりもCDDPに対する感受性が高かった。この原因として、IMC-2におけるBd-2の強い発現が関連していると考えられたため、bd-2に対するアンチセンスDNAにより、Bd-2発現を抑制しCDDPに対する感受性を増大できるかどうか検討した。アンチセンスDNA処理により、Bd-2蛋白の発現はIMC-2では抑制されたがKBでは変化せず、CDDPに対する感受性は、IMC-2では有意に亢進し、KBでは変化しなかった。同様にIMC-2においてのみ、bd-2アンチセンスDNAによって抗Fas mAbによるアポトーシスが有意に高められた。 以上の結果より、癌細胞のFasおよびBd-2の発現をコントロールすることで細胞死の誘導を増大し、より効果的な化学療法を行いうる可能性が示唆された。
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