IgA腎症患者の扁桃細胞にてパラインフルエンザ菌特異的IgAが産生されているのか、またパラインフルエンザ菌抗原がIgAを産生されうるような環境を誘導しうるのかについて研究を開始した。 まず、IgA腎症患者12名の咽頭培養を行ったところ、全例パラインフルエンザ菌陽性であった。次に、慢性扁桃炎患者26名中16名(60%)パラインフルエンザ菌陽性であった。そこで手術で得られたIgA腎症患者12名と慢性扁桃炎患者中でパラインフルエンザ菌陽性であった16名の扁桃を用いて以下の実験をおこなった。すべての扁桃は患者の同意を得たのち、実験に用いた。得られた扁桃から単核細胞を分離し、超音波で粉砕したパラインフルエンザ菌、対照の緑膿菌と培養した。7日目に培養上清と細胞を回収し、その細胞培養上清を回収し、培養した細胞からRNAとDNAを抽出した。そして各種測定まで冷凍保存した。 IgA免疫グロブリン測定:培養上清中パラインフルエンザ特異的IgAと総IgAをELISA法にて測定した。その結果、IgA腎症患者と慢性扁桃炎患者間では、無刺激・パラインフルエンザ刺激・緑膿菌刺激の3群間の総IgA量に差は認めなかった。またそれぞれの刺激による無刺激との比較(Stimulation lndex)にも差は認めなかった。一方、パラインフルエンザ特異的IgAでは特異的IgAの量的な有意差は認めなかったが、Stimulation indexにおいて、パラインフルエンザ菌刺激におけるIgA腎症患者の扁桃細胞が慢性扁桃炎患者の扁桃細胞に比べて有意差をもって高値を示した。 サイトカイン測定:培養上清中TGF-βをELISA法にて測定した。その結果IgA腎症患者の扁桃細胞は無刺激に比べパラインフルエンザ菌刺激において有意に高いTGF-β産生を認めた。慢性扁桃炎患者の扁桃細胞ではそのような差は認められなかった。
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