研究概要 |
1.自然抗原暴露下および非暴露下におけるスギ花粉症患者の血清および鼻汁中の可溶性TNFレセプター、可溶性Fasレセプター、可溶性ICAM-1、IL-4をELISAキットを用いて測定し、正常人と比較した。抗原暴露下のおけるスギ花粉症患者の血清および鼻汁中可溶性ICAM-1とIL-4は正常人に比較して有意に高値を示した。血清可溶性ICAM-1とlL-4は、統計学的に有意な負の相関関係を示した[Kato M et al.Ann Oto RhinolLaryn(in press)]。スギ花粉症患者の鼻汁中の可溶性TNFレセプターは抗原暴露下において正常人に比較して有意に高値を示した[現在投稿中]。さらに、我々は、こうしたスギ花粉症患者の病態の変化が、花粉飛散がピークに達する前の少量飛散の時期にすでに始まっていることを見いだした。一方、スギ花粉症患者の血清および鼻汁中の可溶性Fasレセプターの値は正常人と比較して有意な差は認めなかった。以上の知見は、抗原暴露下におけるスギ花粉症の病態に可溶性ICAM-1、IL-4、可溶性TNFレセプターが関わっていることを示唆している。 2.大気汚染物質の一つである重金属(塩化第二水銀)や高圧酸素なとの酸化ストレスや老化が、免疫担当細胞(リンパ球、ケラチノサイトなど)の細胞内シグナル伝達や増殖応答などにどのような影響を及ぼすのかについて調べた。我々は、酸化ストレスなどの外的刺激が細胞増殖やアポトーシスに深く関与していることを見いだした[Akhand AA et al.Eur J lmmunol27:1254-9,1997,Nakashima I et al.ImmunolToday 18:362,1997,Ohkusu K et al.J Immunol 159:2082-4,1997,Xu X et al.lmmunol Lett 59:79-84,1997]。また、我々は酸化ストレスに対して抑制的に働くことが推定されている小柴胡湯がケラチノサイトの細胞増殖に影響を与えることを見いだした。 以上のように我々は、「大気汚染物質である重金属をはじめとする酸化ストレスが直接的に免疫担当細胞に影響を与え、鼻アレルギーの病態に影響を与える」という仮説に基づき実験を施行し、その基礎となるデータを得ることに成功した。
|