国立岡山病院、岡山大学医学部等の耳鼻咽喉科外来から分離同定された肺炎球菌23株について以後の検討に供した。培養によって肺炎球菌と同定されたこれらの臨床分離株は一部をMICの測定に用いた。サンプルの一部からは蛋白を抽出し、ペニシリン結合蛋白(PBP)を検討した。残りはDNAを抽出してRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA Analysis)法による分子疫学的検討に用いた。またこれらと同時に従来疫学的報告に幅広く用いられてきた血性型も検討した。これらの23株中ペニシリン感受性株は12株(52.2%)であり、残りは低感受性ないしは耐性株であった。うち2株(8.7%)は多剤に高度耐性を示す薬剤耐性肺炎球菌であった。PBPは感受性株および高度耐性株では各々の群で殆ど均一なバンドパターンを示していたが、中等度耐性株ではそれぞれの株によって多形性に富んだPBPプロフィールを示していた。これらのうち、すでに10例については血清型とRAPDによる解析を行っているが、その10例のうちでは血清型は8例が19型、2例が6型であった。RAPD法では各々の血清型を示す肺炎球菌を更に詳細に分類し、しかもそれらの近縁性を検討することも可能であった。こうした特性から従来広く行われてきた血清型による分類に比べてRAPDには新たな有用性があることが示唆された。現在、RAPD法による解析を更に多くの臨床検体に応用し、その疫学的調査を行っている。
|