研究概要 |
これまでの研究から咽頭期嚥下は,咽頭・咽頭粘膜を支配する上喉頭神経内枝ならびに舌咽神経によって惹起され,その出力パターンを形成するニューロン(嚥下関連ニューロン)はおもに延髄内に存在することが判明している.本研究は延髄弧束核およびその周囲の小細胞性網様体に存在する咽頭内注水によって惹起された嚥下時の嚥下関連ニューロンの神経活動を細胞外記録し,これらのニューロンに対する両側上喉頭神経ならびに舌咽神経からの促進性あるいは抑制性入力について解析した.その結果同側上喉頭神経から単シナプス性に入力を受けていると考えられる弧束核内のsensory-relayニューロンにおいては対側からの入力はわずか4%であった.そしてこれら末梢からの入力を受ける嚥下関連ニューロンはおもに弧束核間質亜核に存在していた.これに対して弧束核周囲の小細胞性網様体で記録された介在ニューロンにおいては対側からの入力は31%と弧束核内のsensory-relayニューロンに比し有意に高率に認められた.さらに対側からの入力には条件刺激下に明かとなった閾値下の興奮性および抑制性入力のいずも存在した.このことから対側末梢神経からの情報は弧束核内ではなく,おもに小細胞性網様体に存在する介在ニューロンにおいて処理されていることが示唆された.今後は除脳ネコを非動化し人工呼吸下にfictive swallowingさせ,各嚥下筋を支配する運動神経の神経電位を導出しながら,弧束核間質亜核内で嚥下関連ニューロンの膜電位変化を記録する予定である.
|