本年度、当研究においては昨年度に引き続き2才から10才までの小児喘息性気管支患者(アトピー型、非アトピー型)の上下気道症状(鼻症状および気管支炎症状)、その他のアレルギー症状(アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎)、慢性副鼻腔炎につき、口蓋扁桃およびアデノイド手術的除去後の予後、患者血清変化につきさらに長期的検討を行った(平均観察期間約30ヶ月)。また、手術時に摘出したアデノイド扁桃組織を同一患者につきペアで凍結切片を作成し、リンパ球、マスト細胞、活性化好酸球、好中球、IL-4およびIL-5陽性細胞などにつき免疫組織学的検討を行った。前年度報告と同様、アトピー性喘息の1名が気道症状の不変を認めた他は、全員の喘息症状が改善され、喘息薬が減量もしくは中止されており、術後悪化例はなかった。血清中イムノグロブリンについては(1)非特異的IgEについては術後の有意な低下は認めなかった。(2)HDmite特異的IgEについては増加、不変例を認めたものの低下例はなかった。(3)アトピー素因・喘息症状の有無に関わらず小児アデノイド・扁桃組織内にはマスト細胞、活性化好酸球、好中球、IL-4およびIL-5陽性細胞の局在を主に濾胞間領域(一部濾胞内)に認め、各種外来抗原に対する扁桃組織内でのアレルギー性反応の存在が示唆され、更なる検討を要することが判明した。
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