[目的]椎骨脳底動脈系の虚血の際に生じる前庭神経核ニューロン障害の発症メカニズムを解明するために、低酸素刺激時の前庭神経核からのグルタミン酸遊離およびその機構について微小透析法を生体位で用いて検討した。 [方法]クロラロースで麻酔した成猫の前庭神経核に脳マイクロダイアリーシスプローブを刺入して、今回購入したマイクロインジェクションポンプおよびリキッドスイッチを用いて人工脳脊髄液(aCSF)を潅流し、微小透析を行った後マイクロフラクションコレクターで経時的に回収した。回収したサンプルを電気化学検出器(ECD)付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により解析し、今回購入したHPLC-ECD制御用コンピューターを用いてグルタミン酸遊離量を算出した。人工呼吸器を用いた調節換気下に5%酸素ガスを5分間吸入させて低酸素負荷を与えた時のグルタミン酸遊離量の変化について調べた。 [結果]低酸素吸入中、前庭神経核においてグルタミン酸の遊離量は吸入前より有意に増加(873.5%)した(n=14)。低Ca濃度のaCSFの潅流下に低酸素負荷を与えるとグルタミン酸遊離の増加は275.8%に抑制された(n=5)。 [結論]以上より、低酸素による前庭神経核のニューロン傷害はグルタミン酸の遊離増加により惹起されることが考えられ、またこのグルタミン酸遊離にCaが重要な役割を演じている可能性が示唆された。
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