前庭神経内側核(MVN)ニューロン活動に対するニューロステロイド(pregnenolone sulfateおよびdehydroepiandrosterone sulfate)の作用について電気生理学的に検討したところ以下の結果を得た。 pregnenolone sulfate(PS)を微小電気泳動法を用いてMVNニューロンに直接投与したところ、MVNニューロンの自発発火を用量依存性に亢進させた。この亢進は抑制性のtypeIIニューロンよりも興奮性のtypeIニューロンの方が大きかった。 dehydroepiandrosterone sulfate(DHEAS)を微小電気泳動法を用いてMVNtypeIニューロンに直接投与したところ、DHEASはtypeIニューロンの自発発火および回転誘発発火には影響をおよぼさなかったが、抑制性神経伝達物質であるGABAの抑制作用をDHEASの用量依存性に減弱した。さらに、DHEASはGABAの作用部位であるGABA_AおよびGABA_Bレセプターの選択的作働薬であるmuscimolおよびbaclofenの作用を両者とも抑制したことから、DHEASのGABA作用に対する減弱作用はGABA_AおよびGABA_Bレセプターの両方を介していると考えられた。 以上からPSは自発発火において抑制性のtypeIIニューロンよりも興奮性のtypeIニューロンを強く亢進させることにより、そしてDHEASはtypeIニューロン上における抑制性神経伝達物質の作用を減弱することによりそれぞれMVNニューロンの興奮性を高めることが明らかになった。
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