一側迷路破壊後に生じる前庭代償に対してストレスの影響およびストレスに対する生体反応に関係があるとされるステロイドの関与について行動薬理学的に検討したところ以下の結果を得た。 エーテルにより麻酔したWister系ラットに一側迷路破壊を行ったところ、破壊後より健側向きの自発眼振および頸部の捻転が見られた。一側迷路破壊したラットをコントロール群と破壊後ラットを動けないように固定するストレスを3分間、計8回負荷したストレス群とに分類し自発眼振の減少を比較すると、ストレス群の方が観察時刻における自発眼振数が有意に多く、自発眼振の減少が遅延することがわかった。 さらにこのストレス群に対するステロイドの関与を検討するため、ストレス群をステロイド合成酵素阻害薬であるtrilostaneを腹腔内投与した群と溶媒のみを投与した群に分類して、一側迷路破壊後の自発眼振数を比較検討した。溶媒のみの投与群ではストレス負荷単独群と自発眼振数の減少は有意差が認めらずほぼ同様だったのに対し、trilostane投与群ではストレス負荷による自発眼振減少の遅延は投与12時間後より次第に改善されストレスを負荷しないコントロール群とほぼ同程度まで減少した。 以上今回の研究から、ストレス負荷により一側迷路破壊後の前庭代償は遅延すること、このストレス負荷による前庭代償の遅延には少なくとも一部はステロイドが関与していることが示唆された。
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