Sony社製Virtual Phoneを用いた疑似音場システムを確立し、補聴器装用前後のファンクショナルゲイン、SRT、語音明瞭度を測定し補聴器装用効果の判定に用いた。装用直後においては、ファンクショナルゲインに比較してSRTの改善は小さく、特にファンクショナルゲインの周波数特性が高音強調の場合にSRTの改善が少ない結果が得られ、装用効果の判定に利用するにはその解釈に注意が必要と思われた。語音明瞭度は呈示レベルにより結果が異なり、中等度までの難聴者の場合には平均的な会話レベルである65dBSPLにおける結果が装用効果判定に最も有用であった。補聴器装用後および聴覚リハビリテーション受講後の長期におたる経時的変化についてデータが集まっているが、未だその数は統計的解析には不十分である。傾向としては、補聴器を日常的に使用している耳では、補聴耳、裸耳とも語音明瞭度が改善あるいは非補聴耳と比較して良い結果を示す傾向が認められ、聴覚リハビリテーションの効果が示唆された。今後さらにデータを集め、補聴器装用後の時間経過、一日の装用時間、装用法の巧拙、年齢、コミュニケーションストラテジーの巧拙などの要因との関連を検討する。また、聴覚リハビリテーション受講後には、補聴器装用時間の延長、装用テクニックおよびコミュニケーションに望む態度において改善が認められ、それらの要因の経時変化を点数化しリハビリテーション効果の評価に利用する方法を考案しており、評価法としての確立を目指している。
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