[目的]我々はマウスに牛内耳蛋白を感作すると、内耳にリンパ球主体の炎症細胞浸潤が生ずること、リンパ球受身移入によって無処置のレシピエントマウスにも内耳炎が発症する事を報告してきた。今年度はこの移入細胞のホーミングの検討をおこなった。[方法]実験動物にはC57BLマウス、6週令の雄を使用した。牛内耳粗抗原2mgとFCAで免疫後10日目にドナーマウスの単核球をコンカナバリンAと48時間培養後、蛍光色素のPKH67-GLでラベルした。このラベルされたリンパ球をレシピエントマウスに静注し、移入後7日目にレシピエントマウスの組織標本を作製した。右側頭骨はパラフィン胞埋HE染色を行い、左側頭骨は凍結処理し蛍光顕微鏡で観察した。対照組織として脾臓組織も同様に処理した。感作前処置後、FCAのみを皮下注射したドナーマウスを用いて対照実験を行った。[結果]HE染色では、前回報告と同様に蝸牛外リンパ腔に細胞浸潤がみられ、禍牛基底回転鼓室階に最も著明であったが、前庭階にも浸潤細胞がみられた。前庭系、内リンパ嚢には浸潤細胞は観察されなかった。蛍光顕微鏡下の観察では蛍光色素でラベルされた細胞は、陽性コントロール組織である脾臓にホーミングしていることが確認された。内耳では血管条、内リンパ嚢周囲組織にラベルされた単核球を認めた。対照群マウスには明らかな炎症所見はみられなかった。[考案]上記結果はこの感作マウスの内耳炎は細胞免疫性の自己免疫現象であることを裏付けるものである。今後、さらにリンパ球の内耳へのホーミングの経路や、内耳炎に至るメカニズムを検討する予定である。この研究は、ヒトの内耳性めまい、メニエール病、進行性感音難聴等の内耳疾患の病態解明に大きく寄与することが期待される。
|