耳石器が関与していると言われている、垂直方向の視運動性後眼振OKN、視運動性後眼振OKANの上下差に関して検討した。正常成人20名を対象に、正面座位、仰臥位、懸垂頭位で、60°/Sの垂直OKN、step刺激で、OKNの利得gainとOKANの時定数TOsをサーチコイルシステムを用いて眼球運動を記録し、パラメータとした。OKANのgainでは、各頭位で上向き優位であった(p<0.05)。OKANのTCsでは、各頭位で上向き優位(P<0.01)、各頭位間での上下差の変化を見ると正面座位と比べ仰臥位で有意に減少(p<0.05)、これが懸垂頭位でさらに有意に減少していた(p<0.01)。さらに、正常成人4名を対象に重力方向の変化が耳石器に十分に浸透する充分な時間をとるため、正面座位、右45°側臥位、右90°側臥位の各頭位で体位変換1時間後のOKANのTCsをみたが、統計学的に有意差はみられなかった。今回、耳石器に加わる重力方向を変えたことによる上下差の変化を予想したが、各パラメータに上向き優位の方向優位性は確認できたが、減少はみられたものの逆転はみられなかった。また、充分耳石器が重力方向の影響に慣れた後のパラメータには変化はみられなかった。以上のことから、垂直方向OKN、OKANの上下差には、耳石器入力のみならず視覚入力や中枢神経内での再構築など、他の修飾因子の関与が予想された。
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