正常モルモットの前庭神経節細胞を単離した。抗ニューロフィラメント抗体(NF200)を用いて単離した前庭神経節細胞を同定した。単離した前庭神経節細胞をATP(100μM)にて刺激したところ、一過性の細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が観察された。そしてこの反応は再現性を示した。細胞外Ca^<2+>の非存在下すなわちCa^<2+>-freeの状態においてもATP(100μM)刺激にて一過性の細胞内Ca^<2+>濃度上昇を認めたが、その上昇度は細胞外Ca^<2+>の存在下に比し低値であった。またカルシウムチャネルのblockerであるLaCl_3の存在下では、その細胞内Ca^<2+>濃度の上昇は抑制された。これらのことから、ATP(100μM)刺激による細胞内Ca^<2+>濃度の上昇は外部動員および内部動員の両者に依存するものと考えられた。次にATPの受容体であるP_2-purinergic receptorの拮抗剤であるReactive blue2(100μM)、Suramin(100μM)それぞれの存在下では、ATP(100μM)による細胞内Ca^+濃度の上昇は抑制された。P_1-purinergic receptorに親和性を有するAdenosine刺激では、細胞内Ca^<2+>濃度の変化は認められなかった。これらのことから、モルモット前庭神経節細胞にP_1ではなくP_2-purinergic receptorが存在し、ATP刺激による細胞内Ca^<2+>濃度の上昇機構はP_2-purinergic receptorを介したものであることが示唆された。以上のことから内耳前庭において細胞外ATPが求心性の神経伝達物質または神経修飾物質としての働きがある可能性が考えられた。今後ATP、Reactive blue2、Suraminそれぞれの濃度依存についての検討を予定している。
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