研究概要 |
水晶体は発生過程において、クリスタリン遺伝子などの発現が巧みに調節を受けることにより、その透明な規則正しい構造を完成する事ができるが、遺伝子発現の調節機構については全くわかっていない。最近、いくつかのクリスタリン遺伝子の上流に、転写調節因子であるMaf蛋白質の結合部位があることが明らかにされ、maf遺伝子ファミリーが水晶体の分化に重要な役割を果たしていることが示唆された。そこで、ラット水晶体の発生過程におけるmaf-1,maf-2遺伝子の発現を組織学的に検討した。胎生期および生後のラット眼球の凍結切片を作成し、maf-1およびmaf-2遺伝子の35S標識アンチセンスRNAプローブを用いたin situ hybridization法を行なうとともに、抗Maf-2抗体を用いた免疫染色を行なった。 胎生16日の水晶体において、maf-1遺伝子は水晶体上皮細胞に、maf-2遺伝子は水晶体線維細胞に特異的に発現していた。抗Maf-2抗体陽性像は核に限局しており、胎生12日から生後7日の核では水晶体線維全体に、生後14日では赤道部に局在していたが、生後12週では陽性像は認められなかった。以上の結果からmaf遺伝子の発現を介した転写制御機構が水晶体の発生機構に重要な役割を持つことが示唆された。
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