「光」が眼血管内皮細胞の一つの役割である「血液関門」に及ぼす影響を調べるため、主に免疫組織学的手法により検索した。動物はラットを用い、麻酔下で紫外線照射装置によって眼に光照射(UV・A)を行い光障害モデルを作製した。光照射後、経時的に眼球を摘出し以下の検討を行った。 1血液関門破綻の評価 蛋白の漏出を眼血液関門破綻の指標として、血管外へのhorseradish peroxidase(HRP)の漏出を光顕的、電顕的に観察した。光照射後、HRPの漏出像が虹彩および毛様体毛細血管周囲に認められた。 2形態学的検索 摘出眼を常法にてエポキシ樹脂包埋して、電顕的に光障害時の眼組織の形態変化を観察した。虹彩における毛細血管や網膜表層の一部の毛細血管は内皮細胞の腫脹を認めた。 3免疫組織学的検索 光障害による眼血管内皮細胞の動態を観察する目的で、我々が樹立したラット血管内皮細胞に対する抗体(REC16・11)や抗血液関門に対する抗体anti-endothelial barrier antigen(EBA)、ICAM-1などの抗接着分子抗体などを用いて免疫組織学的に検討した。その他関連した抗体として、MHC class II、transferrin receptor、glucose transporterを用いた。その結果、正常ラット眼組織では抗血液関門抗体は虹彩や毛様体、網膜の血管に陽性となるが、[CAM-1などの抗接着分子抗体は陰性ないし弱陽性であった。光照射群では照射直後より、抗血液関門抗体は虹彩や毛様体毛細血管において陰性となり、同部位における血管内皮細胞が経時的に抗接着分子抗体陽性となった。また血管内皮細胞はMHC class IIが終始陰性ないし弱陽性であった。 以上の結果より、光障害により、血管内皮細胞の血液関門機能が消失し、接着因子発現により炎症局所においてサイトカインネットワークによる組織修復機構が稼働していることが推測された。また内皮細胞がMHC class IIに終始陰性であることより、軽度の光障害では血液関門機能を消失するも、免疫学的なバリアは温存されていることが考えられた。
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