実験:シトルリン-アルブミン結合物をウサギに反復注射により得られた抗血清からアフィニティークロマトグラフィーにより抗体を精製し、Dot-immunobinding assayで検討したところ、特異性の高いシトルリン抗体が確認された。ウィスターラットの右総頚動脈を1時間結紮して右網膜への血流を遮断した。血流再開直後、15、60分間後、1、4、6日後に固定液で灌流固定を行った。眼球をパラフィンにとエポキシ樹脂に包埋した。免疫組織化学染色では精製一次抗体(グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、タウリン、シトルリン抗体)を用いて、PAP法で染色した。 結果:シトルリンでは、正常と虚血網膜ともに免疫反応は見られず、私は一酸化窒素が産生される際には同時に産生されるシトルリンの量が少ないと考えられる。追試として、さらに検出の高感度免疫染色法が必要(ABC法)である。グルタミン酸では、正常網膜の神経節細胞、内顆粒層の細胞と内網状層にグルタミン酸に特異的な免疫反応が見られたが視細胞層には見られなかった。血流再開直後には、内顆粒層にグルタミン酸を含む細胞が増加し、視細胞内節に強い免疫反応が出現した。血流再開後4日経った網膜では、内顆粒層に強い免疫反応が見られたが、視細胞内節における免疫反応は弱くなった。血流再開後6日経った網膜では内顆粒層、視細胞内節ともにわずかに免疫反応が見られた。タウリンでは、正常網膜の外網状層の細胞にタウリンに特異的な免疫反応が見られた。また、視細胞にもわずかに免疫反応が見られたが内顆粒層には見られなかった。虚血網膜では、血流再開後時間が経つにつれて内顆粒層の細胞及び視細胞に強い免疫反応が見られた。電子顕微鏡による観察では、正常網膜ではタウリン免疫反応は見られなかった視細胞内節で、虚血直後に強い免疫反応があることが確かめられた。アスパラギン酸とグリシンでは虚血による影響は見られなかった。 平成10年度は免疫電子顕微鏡法を行う、虚血網膜に細胞レベルでアミノ酸変化の分析を行う予定。
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