研究概要 |
近年の分子生物学的研究により、ミトコンドリア(mt)DNAの3460,11778,14484変異が、レ-べル遺伝性視神経症(レ-ベル病)に特異的に関与すること、およびレ-ベル病ではW網膜神経節細胞がXないしY細胞に比べて、選択的に障害を免れているらしいことが判ってきた。しかしながら、障害部位ならびに障害様式および発症機転の詳細に関しては解明されていない。今回我々は、その解明の一歩として、最近開発された多局所網膜電図multifocal ERG(mERG)を用いて、レ-ベル病と他の視神経疾患を比較検討した。その結果、片眼性視神経炎では.mERGの応答密度は、正常対照ないし健眼と比べ有意に減弱していた。一方、レ-ベル病では、新鮮例では正常と変わらなかったのに対し、陳旧例では応答密度が低下傾向を示した。mERGの起源は基本的には網膜外層と考えられているので、視神経炎では、病初期より網膜外層にまで病変が及んでいること、これに対し、レ-ベル病は、やはり、網膜神経節細胞が原発病変であり、病初期には網膜外層は障害されないこと、しかし、経年的に双極細胞より外層へ経シナプス的に病変が進むこと等の可能性が示唆された。さて、種々の神経変性疾患がアポトーシスの関与を受けていることが知られているが、レ-ベル病においても、近年アポトーシスと網膜神経節細胞死の関連が取りざたされている。現在、これを解明する糸口として、レ-べル病および各種視神経疾患患者の髄液のサイトカインおよびアミノ酸構成を解析している。さらに、アポトーシス関連遺伝子の解析を行う予定であり、次年度に継続していきたいと考えている。
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