目的:角膜実質細胞が引き起こすコラーゲン分解に対して、何れの病原因子が主として関与しているのか明らかにすること。 方法:家兎角膜実質細胞を三次元I型コラーゲンゲル内で培養し、ゲル上に緑膿菌由来の病原因子エラスターゼ、エキソトキシンAおよびリポポリサッカライド(LPS))を含む無血清培養液を重層して24時間培養した。培養終了後、培養上清を限外濾過し加水分解産物中のヒドロキシプロリン量を測定し、コラーゲン分解活性を算出した。また、培養液中のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の変化をゼラチンザイモグラフィーで検討した。 結果: 1)エラスターゼのコラーゲン分解活性。 緑膿菌エラスターゼは濃度依存的にコラーゲン分解を促進させた。角膜実質細胞は不活性型のproMMP-9とproMMP-2を分泌するが、エラスターゼを作用させるとそれら不活性型proMMPは減少し、活性型のMMP-9とMMP-2が増加した。 2)エキソトキシンAのコラーゲン分解活性。 エキソトキシンAはコラーゲン分解活性に全く影響を与えなかった。ゼラチンザイモグラフィーの結果から、何れのMMPも添加したエキソトソキシンAの量に依存して減少するのが観察された。エキソトキシンAは、角膜実質細胞に対しては毒性作用を示した。 3)LPSのコラーゲン分解活性。 LPSはコラーゲン分解活性に全く影響を与えなかった。ゼラチンザイモグラフィーの結果でも、何れのMMPにも量的な変化は観察されませんでした。 結論:緑膿菌病原因子の中で、エラスターゼが角膜実質細胞のコラーゲン分解を促進するのに中心的な役割を演じている。エラスターゼによる角膜実質細胞のコラーゲン分解促進作用は、角膜実質細胞が分泌する不活性型MMPを活性型に変換する結果として生じているものと考えられた。
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