我々はすでに、ヒトS抗原の一部分のアミノ酸配列#29(TLTLLPLLANNRERRGIALD)が種を越え(ヒト、サル、ラット)、また同一種間のMHCの差異に関わらず(ヒト、ラット)、リンパ球を刺激する能力のあることを証明した(Int.Immunol.9;169-177)。ところで#29は、MHC クラスIIに結合する最小限必要なアミノ酸長に比べて長く、免疫応答の誘導に不必要な部分を含んでいるものと思われる。本研究では、実験的自己免疫性ぶどう膜炎を発症させやすい系統であるルイスラットを用い、#29のどのアミノ酸配列がリンパ球刺激能を持ち、またぶどう膜炎を発症させるために必要かを検討した。#29のN末端より15アミノ酸長で、1アミノ酸ずつ重複するオーバーラッピングペプチドを作成した。各々のペプチドを免疫し、その3週間後、免疫原性、ぶどう膜炎惹起能を検討した結果、N末端より始まる15アミノ酸配列(15-1:TLTLLPLLANNRERR)にのみその両者を認めた。また、この15アミノ酸配列の両端を削除したペプチド(LTLLPLLANNRER)を作成し同様な検討を加えたところこの13アミノ酸長のペプチドには免疫原性、ぶどう膜炎惹起能とも認められなかった。以上の結果より15-1がぶどう膜炎惹起、免疫能の誘導に必須であることが明らかとなった。
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