パターン視覚誘発電位(PVEP)は眼科領域では眼底黄斑部や視神経の機能評価に用いられ、病変による機能障害の判定などに利用される。PVEPのうち刺激の反転頻度が早い、8ヘルツ以上のものをsteady-statePVEPという。刺激の空間周波数を変化させるとPVEPの振幅はある空間周波数で最大となり、その空間周波数より高いものでも低いものでも振幅は低下する。この現象を空間周波数特性と呼ぶが、この特性を利用して他覚的に視力を測定することができるようにしたものがスイープPVEPである。この方法で得られた視力(PVEP視力)と通常の視力表を使った自覚的視力検査との違いをみるために正常者の眼前にアクリルフィルターをおき視力を低下させてPVEP視力と通常の視力を測定し比較した。フィルターなしの状態で通常の視力検査での視力が1.0以上のときでもPVEP視力は0.6から0.7を示した。アクリルフィルターの数を増やすと通常の視力検査による視力が低下するよりも早くPVEP視力は低下を示した。通常の視力検査とPVEP視力は0.3で一致したが、1.0から0.3のあいだでも両視力検査の値は1オクターブ以上離れることはなかった。実際の臨床ではどれくらい視力が障害されているのかを評価することに使用するため、視力が良い状態での両視力検査の乖離はあまり問題にならないと思われる。 また、各種眼疾患による視力障害をもつ80例に対しても両視力検査を行い相関をみた。通常の視力検査では0.3より良い症例ではPVEP視力は低くなり、反対に通常の視力が0.3以下になるとPVEP視力はよくなる傾向がみられた。両視力検査の間の相関係数は0.66であった。特に黄斑疾患の症例で両者の相関は高かった。 乳幼児に対してもPVEP視力測定を行う予定である。
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