研究概要 |
ベーチェット病患者における慢性再発性の炎症病態形成におけるT細胞の役割について,activation induced cell death(AICD)を中心に検討した. 1.T細胞の活性化 活動性ぶどう膜炎を有する患者のCD4陽性細胞のCD69陽性率は正常対照に比べ有意に高く,ヘルパーT細胞が活性化状態にあることが確認された.しかしこのCD69陽性率はOKT-3刺激による培養24時間後から,正常対照では有意に上昇したのに比べて,ベーチェット病患者群では軽度上昇するにとどまり,24時間以降は対照群よりも有意に低値となった.またCD4陽性細胞におけるFas抗原は,OKT-3刺激下の培養により対照群では有意に増加するのに比べ患者群では明らかな増加がみられず,24時間後には対照群のFas抗原陽性率が患者群よりも高くなっていた.即ち,患者T細胞はある程度に活性化された状態にとどまり,リンパ球を活性化するような刺激に対する応答性はむしろ低くなっていると考えられる.Fasリガンドについては,CD4陽性細胞では対照群,患者群いずれも24時間の刺激後に有意に上昇したがCD8陽性細胞では対照群のみ有意に上昇し,患者群では変化がみられなかった. 2.アポトーシスの誘導 リンパ球をOKT-3により活性化した後アポトーシスを誘導する刺激下で培養すると,対照群と非活動性ぶどう膜炎の患者群では有意にアポトーシス細胞の割合が上昇したが,活動性患者群では有意な上昇はみられなかった.即ち活動性ベーチェット病患者のT細胞はアポトーシス抵抗性であり,AICDを介した消炎が起きにくいことが明らかとなった. 以上の結果よりベーチェット病においてはT細胞の活性化とアポトーシス,AICDの機序に異常を生じ,これが慢性炎症病態を形成する原因になりうると考えられた.
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