研究概要 |
細胞のアポトーシスを制御するアポトーシス関連分子としていくつかの蛋白が知られているが,このうちBcl-2はアポトーシスを抑制すると考えられている.また,Caspase8はFasLやTNFRからのアポトーシスシグナルを伝達する蛋白である.本研究では今年度,ぶとう膜炎患者末梢血単核球(PBMC)のアポトーシス関連分子の発現をmRNA及び蛋白レベルで解析した.その結果,bcl-2,caspase 8のmRNAは,ぶとう膜炎患者も健康成人もいずれも発現がみられた.一方蛋白レベルでの発現を比較すると,活動性ぶとう膜炎患者ではBcl-2とCaspase 8が減少していたが,非活動性ぶとう膜炎患者ではCaspase 8が増加していた.これより非活動性ぶとう膜炎患者におけるPBMCのアポトーシス誘導が示唆される. 一方実験的ぶとう膜炎(EAU)に関しては従来Th1優位の自己免疫疾患であるとされている.また近年,ヒトの自己免疫疾患の炎症活動性にTh1及びTh2のバランスが関与していることが報告され注目を集めている.今年度は,非免疫の0日群及び,免疫後3,6,8,10日群から脾臓を摘出し,比重遠心法でリンパ球を分離し細胞表面のCD4および細胞内のIFN-γ,IL-4を染色し,フローサイトメータで解析した.その結果CD4^+細胞におけるIFN-γ産生細胞の割合は,EAU発症前の免疫後3,6,8日群で有意に増加したが,発症後の10日群では減少した.一方,CD4^+細胞におけるIL-4産生細胞の割合は発症直前の8日群で増加したが,10日群では減少し始めた.また,CD4^+IFN-γ産生細胞/CD4^+IL-4産生細胞比は,3日群から上昇し6日群で更に上昇したが8日群では低下した.これより発症過程における脾臓Th細胞は発症以前に最もTh1優位になり,その後はむしろ減少する事が明らかとなった.
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