眼内炎症におけるFas-Fas L systemの発現を明らかにするため、ぶどう膜炎患者の前房水および硝子体中におけるsoluble Fas Lの発現について検討した。 informed consentのもとに、ぶどう膜炎患者の前房水および硝子体を採取し、遠心した後の上清についてsandwich ELISA法を用いてsoluble Fas L濃度を測定した。前部ぶどう膜炎(前房水採取)の内訳は、サルコイドーシス2眼、HTLV1眼、桐沢型ぶどう膜炎1眼、原因不明6眼の計10眼であり、対照には、白内障患者の手術時に得られた前房水7眼を用いた。後部ぶどう膜炎の内訳は、水晶体起因性ぶどう膜炎4眼、サルコイドーシス4眼、HTLV2眼、トキソプラズマ1眼、桐沢型ぶどう膜炎1眼、原因不明3眼の計15眼であり、対照には黄斑円孔3眼の手術時硝子体液を用いた。 前房水におけるsoluble Fas L濃度は、ぶどう膜炎では549.4±247.4pg/ml(mean±SEM)であったのに対して、対照群では、いずれも検出限界(40pg/ml)以下であった(P<0.05)。また、ぶどう膜炎患者の硝子体液におけるsoluble Fas L濃度は1172.7±342.2pg/ml(mean±SEM)であったのに対して、対照群の硝子体液においてはいずれも検出限界(40pg/ml)以下であった。興味あることには、水晶体起因性ぶどう膜炎の硝子体液におけるsoluble Fas L濃度は141.2±89.5pg/mlであり、他のぶどう膜炎(1547.8±412.1pg/ml)よりも低い傾向にあった。 以上の結果より、ぶどう膜炎患者の前房水および硝子体中において高濃度のsoluble Fas Lが発現することが明らかとなった。このことより、ぶどう膜炎の組織障害や炎症にFas-Fas L systemを介したアポトーシスが関与する可能性が示唆された。
|