眼内炎症におけるFas-Fas L systemの発現を明らかにするため、ぶどう膜炎患者の前房水および硝子体を採取し、遠心した後の上清についてsandwich ELISA法を用いてsoluble Fas L濃度を測定した。前部ぶどう膜炎(前房水採取)の内訳は、サルコイドーシス5眼、桐沢型ぶどう膜炎3眼、HTLV1眼、原田病1眼、原因不明7眼の計17眼であり、対照には、白内障患者の手術時に得られた前房水12眼を用いた。後部ぶどう膜炎の内訳は、サルコイドーシス7眼、水晶体起因性ぶどう膜炎4眼、桐沢型ぶどう膜炎3眼、細菌性ぶどう膜炎3眼、HTLVl眼、トキソプラズマ1眼、原因不明3眼の計22眼であり、対照には黄斑円孔7眼の手術時硝子体液を用いた。前房水におけるsoluble Fas L濃度は、ぶどう膜炎では367.0±154.7pg/ml(mean±SEM)であったのに対して、対照群では、いずれも検出限界(40pg/ml)以下であった(P<0.05)。また、ぶどう膜炎患者の硝子体液におけるsoluble Fas L濃度は1132.2±281.7pg/ml(mean±SEM)であったのに対して、対照群の硝子体液においてはいずれも検出限界(40pg/ml)以下であった。これらのの結果より、ぶどう膜炎患者の前房水および硝子体中において高濃度のsoluble Fas Lが発現することが明らかとなった。 soluble Fas L発現のoriginを明らかにするため、vivo角膜細胞と培養ミュラー細胞におけるFas mRNA、Fas L mRNAの発現をRT-PCR法で検討した。その結果、vivo角膜細胞(全層)においてFas mRNAおよびFas L mRNAの発現を認めた。培養ミュラー細胞ではFas L mRNAの発現を認めなかった。前房内solubleFas Lのoriginのひとつは角膜である可能性が示唆された。硝子体内soluble Fas Lのoriginはミュラー細胞以外の細胞であると考えられた。
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