研究概要 |
apolipoproteinJ(apoJ,clusterin)は種々の粘膜上皮、とくに角膜上皮で多くで産生されている糖蛋白であり、細胞外スカベンジャーなど多機能性が提唱されている物質である。本研究では、角結膜上皮疾患におけるapoJの蛋白の発現、apoJのレセプターであるgp330の発現、涙液および前房水中のapoJ濃度の測定を行い、apoJと眼表面疾患との関連性について考察した。その結果、瘢痕性角結膜上皮症であるStevens-Johnson症候群において、分化異常(角化)を示した結膜上皮でapoJの発現が著しく減弱していること、膠様滴状角膜変性症や格子状角膜変性症などの遺伝性角膜アミロイドーシスにおいて、アミロイド沈着部位にapoJが局在していることが判明した。また、正常人の標本で、gp330は輪部上皮に局在していたが、角膜上皮、結膜上皮には局在していなかった。涙液中のapoJ濃度の測定をELISA法で行ったが、涙液中に存在するなんらかの物質がapoJに結合しており、測定不可能であった。一方、前房水中のapoJの濃度は725.3±519.6となり、前房水中に多く存在している蛋白の一つであることが明らかとなった。以上の結果より、apoJは眼表面上皮の正常分化に必須の蛋白であることが示唆された。また、apoJは脳アミロイドーシスにおけるのと同様に、pathologic chaperoneとして、角膜アミロイドーシスの病態形成に関わっていることが推測された。apoJは種々の眼表面疾患に関わっており、眼表面疾患の治療の応用できる可能性が考えられた。
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