眼動脈より末梢の血管トーヌスを測定する目的で実験を計画し、さらに研究計画調書を提出したが、それに従い今回、緑内障治療薬であるチモロール、ベタキソロールの白色家兎の摘出後毛様動脈に及ぼす影響を等尺性収縮記録法を用い比較、検討した。 白色家兎を屠殺した後、眼球を摘出し、顕微鏡下で視神経と平行して走る後毛様動脈を摘出した。この血管を微小血管収縮測定装置Myograph System(J.P.Trading社。デンマーク)に固定し薬剤に対する効果を調べた。 この血管はα-交感神経作用薬(フェニレフリン)で濃度依存的に収縮を示したがβ-交感神経作用薬(イソプロテレノール)は全く効果を示さなかった。ゆえにこの血管にはα-受容体は存在するものの、β-受容体はほとんど存在しないと思われた。さらに高K溶液で収縮させた状態でβ-受容体拮抗薬、緑内障治療薬であるチモロール、ベタキソロールは血管を弛緩させた。この弛緩はNO合成阻害剤であるN-ニトローL-アルギニンメチルエステルは全く効果がなかった。この血管にβ-受容体はほとんど存在しない事、弛緩にNOがほとんど関与しない事より考察すると、これらの薬剤の弛緩反応はCa channel阻害作用等が考えられた。以上の結果よりチモロール、ベタキソロールには若干の血流改善作用を有する事が予想された。 当初、眼循環を主に調節する物質はエンドセリン、プロスタグランディン等のペプチドと考えていたが今回の実験よりβ-受容体拮抗薬の作用は基礎的にも、臨床的にも非常に重要で更に詳しい実験を推進して行く予定である。
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