角膜上皮創傷治癒時における細胞周期調節タンパク質とくにサイクリンの発現量の違いを検討した。ラット角膜上皮創傷モデルは従来organ cultureの系をもちいていたが、in vivoでおこなっても影響がないことを明らかにしたため、角膜の上皮を剥離させた後経時的に眼球を摘出し免疫染色をおこなった。また、角膜におけるサイクリンD1の発現量は少ないことがわかったため同じG1サイクリンの一種であるサイクリンEの発現もあわせて観察した。正常状態ではサイクリンEの発現は角膜上皮の幹細胞である輪部の基底細胞よりも上皮の方で多く観察されたが、創傷治癒過程の上皮細胞の伸展・移動がみられる時期においてはサイクリンEの発現は輪部の基底細胞において著しくまた上皮の基底細胞においてもその発現が観察され、核よりもむしろ細胞質が染色されていた。さらにサイクリンD1においても弱い発現ではあるが同様の結果が示唆された。これらの結果は増殖のさかんな細胞においてこれらのタンパク質の発現が増加し細胞周期を回転させていることを示しており、またこれらのサイクリンは合成された後細胞質で待機し迅速な細胞増殖に対応していると考えられた。細胞周期調節タンパク質には、サイクリンD1やEの阻害タンパク質であるp27のように、細胞の増殖が停止するときにその発現量が増加し、逆に細胞周期が開始するときには減少することが知られているものもあるので、これらのタンパク質の挙動と併せて検討を加えていきたい。
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