上皮細胞の線維芽細胞様細胞への変化を制御している因子を明らかにする目的で以下の実験をおこなった。 1.上皮細胞の培養基質の違いによるα-SMAの産生の検討 細胞外基質の影響を検討するため、豚眼水晶体より得た水晶体上皮細胞を、5%牛胎児血清を添加したF-12neutient mixtureに分散した。I型コラーゲン、IV型コラーゲン、ファイブロネクチン、ラミニンでコートした、またはコートしていない(対照)6穴マイクロプレート上にこの細胞を播種し、6日間培養した。その後、アルファ平滑筋線維アクチンをモノクローナル抗体を用いて、免疫組織化学的に検出し、全細胞数に対する陽性細胞数の比でアルファ平滑筋線維アクチンの発現を評価した。結果:対照では6日間の培養後約5%の細胞が陽性であったが、IV型コラーゲンでは2.3%、ラミニンでは2.9%と対照に比し有意に陽性細胞数の比が少なかった。I型コラーゲンコートでは3.7%、ファイブロネクチンでは4.1%で対照と有意な差が認められなかった。以上の結果より水晶体上皮細胞のアルファ平滑筋線維アクチン発現に対し細胞外基質が影響を与えることが示唆された。 2.上皮細胞のα-SMAの産生に影響を及ぼすb-FGFの検討 牛水晶体上皮細胞をコラーゲンゲル上に播種し、上記と同じ培養液にて培養し、6日目に上記と同様な方法で陽性細胞数の比を計測した。この結果、100ng/mlのb-FGFでは、対照に比しα-SMAの有意の発現の抑制が認められた。以上の結果により、b-FGFは水晶体上皮細胞のアルファ平滑筋線維アクチン発現に対し抑制的に働くことが明らかとなった。
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