昨年確立させた培養細胞の実験系を用いて、培養液にNGF(100ng/ml)、BDNF(l00ng/ml)を加えて、網膜神経節細胞の細胞生存率と神経突起伸長率を測定したところ、両神経栄養因子とも、有意に増大させた。中枢神経系の網膜神経節細胞において、NGF、BDNFがニューロンの分化促進・生存維持作用を示すことが確認できた。また間葉系細胞の増殖因子で神経細胞にも発現しているPDGF-BB(10ng/ml)について同様に検討したが、有意な結果は得られなかった。しかしラット小脳細胞ではPDGFにより生存日数の延長や神経突起の延長が報告されており、再度検討する必要がある。 また培養液にNGF、BDNF、PDGF-BBを加え、どのような遺伝子が発現しているかアイソトープ標識のプローブを用いたin situ hybridization法により検討した。PDGFβ receptorgene、PDGF gene、c-fos、 c-iun、trkBが発現しているか否か検討した。その結果、私の実験系では、NGF、BDNF、PDGF-BB投与によりPDGFβ receptor gene、PDGF gene、c-fos、c-jun、trkBの発現は観察されなかった。しかし、プローブのラベルにむらがあることやin situhybridizationの処理過程において細胞が脱落するという技術的な問題、網膜神経節細胞の数が少ないことなどの検討課題がいくつかあり、これらの課題を解決してから、再度検討する必要がある。今後は、RT-PCR法の採用を含め実験的手法の変更を検討している。
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