目的:糖尿病網膜症(網膜症)の病態と血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン6(IL-6)、トランスフォーミング増殖因子-β2(TGF-β2)の関連について検討した。 対象と方法:対象は糖尿病患者90例、非糖尿病患者7例の計97例で、硝子体手術時に採取した硝子体液のサイトカイン濃度をELISA法で測定し、糖尿病の有無や臨床所見(網膜症重症度、前房蛋白濃度、HbAlc等)と各サイトカイン濃度との関連を調べた。 結果:VEGF濃度は増殖期網膜症で1285.0±135.7pg/ml、非増殖網膜症で112.9±153.7pg/ml、非糖尿病患者で94.0±61.4pg/mlであり、増殖網膜症期に有無(p<0.01)に高かった。VEGF濃度と他の因子との関連では、前房蛋白濃度との間に有意な相関があった。IL-6は増殖網膜症では37.6±43.7pg/ml、非糖尿病患者では3.2±2.3pg/mlであり、増殖網膜症期に有意に高かった。TGF-β2を硝子体出血の程度毎に比較したところ、硝子体出血が重篤なほどTGF-β2が有意(p=0.018)に高かった。 結論:今回の検討結果より、VEGFに加えてIL-6、TGF-β2が増殖網膜症の病態に関与していることが示唆された。 今後の方針:さらに症例数を増やし、病態と各サイトカインの関連を調べるとともにサイトカイン同士の相関についても検討していきたい。
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