研究概要 |
X連鎖性網膜色素変性症の原因遺伝子がクローニングされた(RPGR Nature genetics 13,35-42,1996)。RPGRは細胞分裂の促進、RNAプロセッシングなどを行う低分子量GTPaseの制御因子と高い類似性があり、細胞増殖などへの関与が議論されているが、その欠損による網膜色素上皮細胞の特異的な変性の理由は全く不明である。in vitroの細胞培養系を用いてRPGRのmRNAを特異的に破壊して網膜色素上皮細胞の諸機能への影響を明らかにする目的で以下の実験を行っている。 ヒトRPGRのcDNA断片のクローニング 1.ヒトRPGRcDNAの1305-1324に相当する20塩基対のセンスオリゴヌクレオチド(5S-2:gAgAggTCTCCAgATTCTTT)と2524-2543に相当する20塩基対のアンチセンスオリゴヌクレオチド(3A-1:AATACACTTggTgACTgTgA)をそれぞれ合成し、ヒト腎臓のmRNAに対してRT-PCRを行った。 2.5S-2と3A-1をプライマーとして得られた1239bpのPCR産物を精製し、TAクローニングキットを用いてプラスミドを構築した。 3.プラスミドを回収し、シークエンスを行い、ヒトRPGRcDNA断片であることを確認した。 ヒト網膜色素上皮細胞株のRPGR発現の確認 1.ヒト網膜色素上皮細胞の株細胞(5×10^5個)からAGPC法により全RNAを抽出し、約5μgのRNAを得た。 2.このRNAに対して上記5S-2と3A-1をプライマーとしてRT-PCRを行い、1239bpのDNA断片を得た。 3.このDNA断片に対して、上記で得たヒトRPGRcDNAをプローブとしてサザン・ハイブリダイゼーションを行った結果バンドが認められ、ヒトRPGRcDNA断片であることを確認した。 以上の結果から、ヒト網膜色素上皮細胞においてRPGRが発現していることが明らかになった。今後、このヒト網膜色素上皮細胞株にヒトRPGRcDNAのアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入して、RPGRmRNAの破壊による網膜色素上皮細胞への影響を検討する準備を進めている。
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